2限目の講義が終わり、ボクは秋澤君と食堂へ向かった。
ボクがコピーしてあげたノート5ページはざるそばの食券に姿を変えた。


「ところで、新田、講義の前になんか言ってたじゃん、なに、それ?」

秋澤君はざるそばを豪快にすすりながら、ボクに訊いてきた。
ボクはため息をもらしながら彼に答えた。

「実はさぁ………」

ボクは秋澤君に、昨日から今日にかけてボクの身の上に降りかかってきた災難を、なるたけ詳しく伝えた。
彼は口をあんぐりとさせながらボクを見ていた。

「なぁ、新田。それのどこが災難なんだ?すげぇ羨ましい話じゃんかよ!俺なんかさ、家に帰っても口うるさいオフクロしかいねぇってのによ!」

う~ん、口うるさくても害を及ぼさない母親のほうがボクにはありがたいのだが。
さらに秋澤君は続ける。

「それに、露出度が高くて、しかも美人なんだろ?言うことねぇじゃんさ!なんなら俺と変わって欲しいよ」

それが、普通の感覚なのかしら?

そんなことを考えていると、突然、携帯が鳴りだした。
普段ほとんど鳴ることのない携帯だから少し焦った。
見知らぬ番号というか、登録されてない番号である。
とりあえず出てみる。


「もしもし………」

ボクの次の言葉を待たずして、電話の向こうから聞きたくない声が聞こえた。

『やっほ~、駿平君?』