図書館で読みかけだった本を読み終えて、ボクは講堂に足を向けた。

「お~い、新田!」

背後からボクの名前が呼ばれた。
数少ないボクの友人の秋澤君だ。

「やぁ、秋澤君、おはよう」

「新田、次の英語史の講義のノートとってある?後でコピーさせてくんないか?昼飯奢るからよ」

ボクは彼の言葉に頷いた。

「だけど、なんでノート欲しいの?」

「先輩から聞いたんだけどさ、あのオバサンさ、教科書からじゃなくて、黒板に書いた自分の言葉から試験出すんだってよ。幸いまだ今日で3回目の講義じゃん、間に合うと思ってさ」

とのことである。
真面目にノートとっていたおかげで昼飯がタダになりそうだ。

「それよか新田、お前顔色悪いぞ。風邪か?」

秋澤君の言葉にボクはため息をついた。

「秋澤君、昼飯食べながら、その件に関しては報告させてもらうよ」


彼は一瞬キョトンとしたが、何事もなかったように、講堂に歩き始めた。