「えっ?だって、ひとみさん家政婦なんだよね?それ、ひとみさんの仕事じゃないですか?」

ボクの正論に対し彼女はボクを睨み返した。
まん丸な大きなネコのような瞳が少し吊り上がる。

「あんた、本気でこの私に家政婦なんてやらせるつもりなの、駿平君?公平ちゃんから聞かなかった?私、名目上、アナタの保護者兼家政婦ってだけよ」

はぁ、左様ですか………
もう、なに言っても無駄だと悟りましたよ。
でも、それじゃあまりにも腹がたつんで、ボクも条件をつけてやることにした。

「わかりましたよ、じゃあ、ボクが料理を作りますから。そのかわり、家の掃除、洗濯、ゴミ捨て、それに食材の買い出しはひとみさんがやってください。ボクは昼間は学校があるんで。それくらいはしてくれないと、対外的に『家政婦』ですって言い訳になりませんよね?」

彼女はボクの提案に舌打ちをした。

「別に世間体なんて、どうでもいいじゃない」

ボクはその言葉に反論する。

「いや、よくないです。近所のオバサン連中に変な噂をたてられるのもイヤだし、そもそも、ひとみさん、アナタ昼間になにもやることないですよね?いくら父が『色々』とお世話になったっていっても、ここでは、ボクとひとみさんの共同生活なんですから。ボクはアナタになんの義理も無いわけですし」

彼女は、はぁ~、と大きなため息をついた。

「かわいくない子ねぇ。まぁ、いいわ。それくらいやってあげるわよ。その代わり料理は任せるからね」

ボクは彼女を言いくるめることができてちょっと嬉しくなった。
言うべきことを言わないと全て自分に跳ね返ってくる気がする。
こうなれば、これからもこのスタンスで彼女と接していこう。
なんだか、ちょっとだけ、自分に自信がもてた気がした。