.二日後.
14時45分.
携帯の着信音が鳴った。
.松田.
”はい。神谷ゆらです。”
' あの、もうついてます?'
名前もなしに用件を言い出す松田さん。
' あ。松田です!'
”はい!はは。分かってますよ!”
'あ。あー、ですよね。'
”はい。 着きました。ハチ公前。”
' あ。いましたいました。'
”じゃあ。切りますね。”
'あ。はい!'
はは。なんかふわふわしてるなこの人。
『こんにちは。今日はどうしますか?』
「ん。あ。どうします?」
『んー?じゃあ。とりあえず歩きましょ。』
「あ。はい。」
なんか。今までの人とは違う感じの人だな。
ちょっとドキッとするときがあるんだよね。
すき?なのかな?
ううん。ダメだ。
お客さんみたいなもんだから好きになんてなっちゃだめだ。
さっきちょっと走ったせいだよね。
そう自分に言い聞かせてたんだ。
''''''あの時、もっと、しっかり、
好きって気持ちにふたをしていれば こんなに苦しい気持ち知らなくてすんだのかもしれないね。''''''
......
あれからしばらく歩いて、
小さな本屋さんがあったので入ってみることにした。
松田さんは本がよっぽど好きなのか私なんてよそにしばらくずっと本に夢中になっていた。
時折、少し笑ったり泣きそうになる目は、眼鏡をかけているせいで少し見えにくかったが凛としているようでどこか切なげだった。
