「陽奈ちゃん遅ぇよ。」
「だからごめんって言ってるじゃん〜。」
帰り道。
いつものように俺は
陽奈ちゃんの車の助手席に座り
文句を言っていた。
すぐ迎えに来てくれると言ったのに
結局学校で1時間待った。
「帰ろうとした瞬間に呼び止められて
残業させられたんだからね!?」
「よそ見して運転すんな。
雨降ってんだから。」
陽奈ちゃんは運転がいつも危ない。
少しでもよそ見すると、
ふらっと車が揺れる。
「謝ってるのに…。」
不貞腐れて、
前を向いて車を走らせる。
車は信号で止まった。
「怒ってる?」
「うん。」
陽奈ちゃんは信号で止まっているのに
ずっと前を向いたまま。
俺の方を見ようとしない。
「止まってる時くらいみれば?」
「よそ見するなって言ってたじゃん。」
…。
この子はあぁいえばこういう。
たぶんここの赤信号は
他のところに比べて少し長かったはず。
外は雨が降ってて窓が濡れていて、
通行人は車の中から見えない。
「陽奈ちゃん。」
俺は陽奈ちゃんのほっぺを掴み
俺の方を向かせた。
そしてキスをした。
「ごめんね。」
「んっ。」
そして信号は青に変わり、
静かに動き出す。
自分でキスをしといて、
いつも恥ずかしいと思う。
「今日も教えてたの?」
「ん?日和ちゃん?」
「そう。」
陽奈ちゃんには
日和ちゃんに勉強を教えてあげてるって
伝えていた。
「うん。」
「なら今日も彼氏君と帰ったんだ。」
一応、
日和ちゃんには彼氏がいるってことも、
俺が日和ちゃんに勉強を教えてることも、
たぶん嫉妬なんて陽奈ちゃんはしないだろうけど
なんか隠し事してるみたいで嫌で、
俺はちゃんと伝えた。
まぁ、
伝えたところで陽奈ちゃんは
『永遠頭いいもんね!
教えてあげなよ!』
なんてことしか言ってこなかったけど。
「学生カップルって
なんだかラブラブで羨ましいね。
青春って感じ!」
俺らがお互い学生だった時。
あんなに一緒にいる時間はあったのに
俺は学年が2つも違うし、
冷やかされるのが苦手で、
日和ちゃんと玄也みたいには
一緒にいるなんてことあんまりなかったっけ。
放課後とかはみんながいなくなってから
会いにはいったりしてたけど、
誰かがいるところで会ったりなんて
滅多にしなかったし。
俺は陽奈ちゃんには
学生時代の青春、なんていう思い出は
あまり残してあげれてなかったのかもしれない。
