「えー、では新学期最初の授業ということで、古典いきますよー。」
そうして3年になって初めての授業が開始する。
先生は去年と変わらず同じ先生。
変わらないね〜なんてユカリと話しながら授業を受けていると
「あはっ、何それ超ウケるー!」
「せやろせやろ?ホンマ間近で見たらもっとおもろいで!」
と
授業中にも関わらずお喋りしてる人物がもう1人。
離れている席の方で騒いでいるのは
もちろん今朝のメンバー。
前後が女子だと
こうも騒がしくなるのか。
「ハタすごいあの子達と仲良くなってるね〜。」
「…そうだね。さすが秦山って感じ。」
と言いながら私はそこから目を逸らす。
---だって、見たくないもん。
…秦山が 他の女子と仲良くしてるところなんか…
「…本当、さすがだよ。」
と
小さく呟いたのは 斎藤くん。
ユカリは先生の話を聞いていたみたいで
たまたま聞こえてなかったみたいだけど
斎藤くんは秦山の方を
少し目を細めながら見て、そう言っていた。
(…斎藤、くん…?)
何を考えているのか分からないその表情に
私は思わずその顔を見つめていた。
すると斎藤くんは秦山から目を逸らして
---パッと、私と目が合う。
(…あ……。)
見てるのバレちゃった、なんて思いながら
小さく笑顔を作って返せば
斎藤くんも フッと口元を綻ばせて返してくれた。
「…小林。」
「ん?」
「今日帰り…俺の買い物手伝ってよ。」
「……え?」
斎藤くんが突然
その笑みのまま私にそう言った。
私は思わず
目を丸くした。
だって斎藤くんと出かけたことなんて
一回もないし
去年仲良くなったのだって
修学旅行の時で、結構友達歴が少ない。
そんな彼が 秦山ではなくて
何で私を…と疑問に思いつつも
「…うん、いいよ。」
私は気付いたら
その約束を承諾してしまった。

