(どうしよう…何着て行こう…。)
秦山との約束の2時間前
私は自分の部屋のクローゼットを眺めながら
たくさんの服を眺める。
(超女の子っぽいのは…ダメだよ引かれるよね。
だからと言って黒のスキニーは…ちょっとキメすぎっていうか…うーん。)
得意分野のはずなのに
いざ自分のこととなると
役に立たないこの知識。
秦山の好みとか、全然分からないし…。
(中学の時の彼女は…ギャル系。
高校入ってからの彼女は…
ちょっと数が多くてあんまり思い出せないけど
やっぱりギャル系だったような…違うような…。)
思い出して見るものの
やっぱり納得のいくものはなくて。
ギャル系なんて私全然着ないし。
どうしようかな…。
(…ええい!!もう適当にワンピース着て行こう!!)
それにタイツでも履いちゃえばいいや!!
と私はもうヤケになって
適当にパッと選んだワンピースを着る。
アイボリーのケーブル編みの
タートルニットワンピース。
シンプルだし丁度いいや。
これにタイツを合わせて…
(……うん、よし。)
髪の毛は邪魔だからまとめて…
メイクは軽くして行こう。
アクセサリーは確かこの辺に…
なんて色々な作業をしている間に
あっという間に2時間は過ぎて-----
-----ピンポーン
(あ、来た!!)
私は荷物を持って玄関へ向かい
パンプスを履いて、ドアの前に立つ。
すぅ…はぁ…
深呼吸をして心を落ち着かせてから
私はドアを開いた。
「…こんばんわ。」
「………!」
私が秦山にそう呼びかければ
秦山は私の姿を見て
目を見開きながら
パチパチと瞬きをする。
(あ、秦山の私服…かっこいい…。)
さすがというべきか
黒のシャツにカーキのシンプルな長ズボンに、オシャレなスニーカーと
シンプルなものを着こなしていた。
「…何か、雰囲気ちゃうな。」
「え?そう?」
「おう……。
…え、ええんとちゃいますかね。」
「!」
秦山は照れているのか
前へ振り返る時に
小さく、でも私に聞こえるようにそう言った。
…秦山の『ええんとちゃう』は
結構な褒め言葉ということを
私は知っている。
(…ふふ、嬉しい。)
緊張していた気持ちが軽くなり
嬉しさで楽しみが込み上げてくる。
「…ほな、行きますか。」
はぐれんように
ちゃんとついて来るんやで?
と秦山が私をからかうように笑って言う。
そうして私たちは
秦山の家へと向かった---。

