X=コタエナシ

「絶対そんなこと思ってないでしょって。会って3秒しか経ってないのに。」


「うわー。俺そんな奴嫌いだわ。」


目を細めて言った。氷雨君にはその時の光景が目に見えているようだ。


「『勉強しているのでどこかへ行ってください』って言ったら…」


気づかない間に涙がこぼれていた。鼻の奥がツンとするあの感じも全くなかった。


「唇を…」


耐え切れなくなって。顔を伏せてしまった。


「大変だったんだな…」


泣き声の奥で優しい声がした。


気づくと私は、氷雨君の腕の中にいた。