X=コタエナシ

「大山さんは?なんで恋愛なんてしたくないの?」


「それは…」


あの日のことを思い出すだけで、今でも泣きたくなる。


「話してる途中で泣いちゃうかもだけど…いい?」


静かに頷いてくれる。こんな人ともう少し早く出会えていたら…そう思った。


「中2のころ、冬が家に彼氏…連れてきたの。」


冬とは同い年で、その頃私には彼氏なんてものはいなかった。


「冬は、家で何もしゃべらないから。何を外でしてるかなんて知らなかった。」


ただ、毎日帰ってくるの遅いな、とか。それくらいにしか思ってなかった。


「ほんとに、一言も話さなかったの?」


「うん。ほんとに一言も。」