X=コタエナシ

その子が私の姿を見たとたん表情を曇らせたのは、私のことを知っているからだ。


「なに、二人知り合い?」


氷雨君の小さな呟きがピンと張られていた空気を断ち切った。


「いえ。知りません。それより放課後の約束覚えていますよね?」


とっさにその子がついた嘘に氷雨君は気づいたみたいだ。


「だから言ったじゃん。今日は無理。」


「えー。じゃあ明日絶対ですよ!」


私が知っているよりはるかに甘ったるい声でそう言い残して帰った。


「っ…」


なんで?また同じことになるの?


「大山さん。なんか知ってるんだよね。」


氷雨君、意地悪だ。


こんな時に聞かないでよ。


「意地悪だよ…」


「そうだよ。俺、意地悪だよ。だから何があったか教えて」

嫌だ。思い出したくもない…


「氷雨君に教える義理はない。」


そういって去ろうとした。なのに、立った瞬間壁に体を打ち付けられた。


「帰さないよ。教えてくれるまで。」


氷雨君との距離が10センチもない。


心臓が暴れだした。