ほどなくして三人の男が暖簾をくぐってやってきた。
モザイク調の渋いスーツの中年と、それよりかはまだ若そうなジャンパー姿の男の人、そしてふたりとは明らかに年代の違う勝気な顔つきの青年が、前もって【予約】と札の立てられたテーブルに案内される。
(へぇ、予約なんてするんだ)
そりゃあ満席になることだってあるけど、予約なんてちょっと野暮じゃないの、こういうお店には。
ちょっぴり冷めた気分になりながら、蕪漬けを使って、小鉢に残ったあんかけを器用に拭い、それをご飯にかけていた佳織は、しかし次の瞬間、佐希子さんが持ってきた器とそこから立ち上る湯気を見て、いきなり目の色が変わる。
しかも、この匂い……。
(さっき、佐希子さんの家から流れてきてたやつ)
あれはあの人たちのためのものだったのか。
それにしてもあれは一体なんだったんだろう、と佐希子さんの手元を注視していると、出された器の中身をあらためた中年がいきなり歓喜の声を上げ、
「これですよこれ。この店に来たらこれを食べないと。ささ、土井(どい)コーチも、熱いうちに食べて食べて」

