「はい。ここです」
人の少なくなった食堂のテーブルの片隅で書き物にいそしんでいた男の子が、どこか脚をかばうように立ち上がった。
「脚、大丈夫か? このまま合宿参加できそうか」
「大袈裟ですよ。打撲で済んだみたいだって保健室の先生も言ってましたし。ちょっと青くなっただけです」
「そうか、ならいいが……、ちょっと見せてみろ。予備の湿布はもらったか?」
甲斐甲斐しく面倒をみる姿がすごく様になっている。
まるで部員のお兄ちゃんだ。自身もスポーツ経験者なのだろうし、手当ても慣れたものなのだろう。
「はい、俺のほうは終わりました。あと、やることはありますか?」
「いいえ。わたしももうお店に戻ります。手伝ってくれてありがとう」
帰り支度をしながら、店にいる詠子のことを思う。
これという連絡がないのは順調にいっている証拠と受け取ってよいものか。
「合宿の最後は練習試合だからな。あんまり無茶するなよ」
そう声をかけるのは一之瀬くんだ。
紆余曲折あったが、今では部員たちと、これというわだかまりもなく野球ができているようで安心した。
「先輩はもっと無茶してくださいよ」
「おお、言うなぁこのやろう」

