「ごちそうさまでした」
食洗機に入りきらなかった分をゴム手袋をはめた手でわしゃわしゃ洗っていると、早見くんの声がした。
振り返ると、カウンターから覗き込む顔が早くもすこし焼けたような。
おかげで美男子ぷりが増している。
「はいはい、お粗末さまでした。お腹一杯になったかしら」
「はい。おかげさまで」
「いいえ」
舐めたようにきれいになった皿が返ってくると佐希子まで嬉しくなる。
お酒を飲みながら何度も箸を止めつつ、ゆったりとした時間の流れを味わう夜の景色も決して嫌いではないけれど、たまにはこういった豪快な食事風景を見るのもなかなか気持ちのいいものだ。
「なにかお手伝いしましょうか」
「あら、気にしなくていいのよ。いつもご飯の後、そこで反省会みたいなものをしているでしょう。野球部の方を優先して」
「今日はないんですよ。ていうかなしなんです。代わりに宿題やれっていう監督からの指示で。まぁその後、体育館でいつもどおりの夜練ですけど」
「大変ねぇ。じゃあちょうどいいからお願いしちゃおうかな」
話していると、まさに絶妙なタイミングで食洗機が止まった。
乾燥機能がついていないから全部手作業で拭かなくてはならず、これがけっこう骨が折れる。

