「――詠子です。国本、詠子」
「そう、ねぇ詠子ちゃん。あなた、今日から少しの間、わたしのお店で手伝いをする気はないかしら?」
詠子ちゃんはもともと丸い目をまたさらにおおきく見開いた。
桜海老と三つ葉の混ぜご飯、蒸し鱈の野菜餡かけ、お浸し、さらに特製のクルミ豆腐に校長先生からの厚意で差し入れられたプリンを添える。
それでも足りない分のご飯はすべて白米にして別に炊いて、浅漬けのお新香と合わせて、それらはセルフでやってもらう。
丹後さんとふたりがかりで配膳すると、彼は一足先に店へと戻り、佐希子は空いた食器を片付けて帰る。
学校に食洗機があってほんとうによかった。
(詠子ちゃん、うまくやってくれているかしら)
彼女が店に辿り着くまえに根岸くんには先回りして指示を出しておいたが、年頃の女の子がいきなり男だけの板場に足を踏み入れるのは心細かろう。
(まぁでも、そのへんは根岸くんの得意分野でしょうね)

