「あら、そうでした? ごめんなさい、ドラマの見過ぎね」
「いやいや……わたしこそ変なところで切っちゃって。――気配がするどころか、むしろ、女っ気のおの字もない有り様で。ていうか、もともとそこまで好色じゃないんでそのへんの心配はしてなかったんですけど、ただ、問題は別のことで……」
佐希子さんは黙ったまま、目顔で先を促した。
「彼、とにかく鈍いっていうか淡白っていうか……、転勤になる前と変わらずやっぱり飄々としてて。いや、それは悪いことではないんですけど、ある程度は。
ただ彼の場合、ドアの前にいるはずのないわたしを見たときでさえ、あれ佳織、久しぶりだねどうしたの? なんてまるで三日前にも会ったみたいな口ぶりで……。せっかくパーティ用とは別のおしゃれ着も用意してったってのに全然気づいてくれなくて、もうがっかり……」
でも一番がっかりしたのは――
「その日、わたしたち、なにもなかったんです」
会うのが実に三ヶ月ぶりだったにもかかわらず。
「まあ」

