「恋愛関係ですか?」
「あ、はは、まぁ……。わかります?」
「どうかするとスマートフォンを気にしていらしたから」
「ああ……」
と、言われて気づく自分に呆れる。見れば、今も無意識にしっかり握りしめているのだからどうしようもない。
見てたって何も起こらないって、もうだいぶ前からわかってるじゃない――。
「佐希子さん」
「はい」
実は、と気づけばわたしは、まだ誰にも打ち明けていない悩みを、知り合って間もない佐希子さんに吐露していた。
「もう5年ちかく遠距離恋愛してる彼氏がいるんですけど、その彼が、そろそろこっちに帰ってこれそうって話だったのが急に白紙になったみたいで……。だからそのとき、なんとなく結婚の話にでもなるのかなって思ったりもしたんですけど、さっぱりで。いや、ずばっと言わないわたしもわたしなんですけど……」
「まぁ相手にもそういう、ある種の空気感? みたいなものがないとなかなか切り出し辛い話ですよね」
「はい……。で、ついこの前、友だちの結婚式がちょうど彼氏の家の近くであったから、せっかくだしと思って連絡なしで押しかけてみたんです。そしたら……」
にわかに言葉につまったわたしを見て、よほど自分の口では言いたくないことなのかと不憫に思ったらしい佐希子さんが気を回し、
「女性の気配が?」
重々しい口調でそう言ったのに、わたしは思わず目を見開いて、
「ちっ、ちがいますちがいます、そうじゃなくて」
と慌てて手を振った。

