「すみません、お客さん。あれは事前に予約してくれた方たちだけにお出してるんですよ」
「なんだ、そうなのか」
あからさまにがっかりしたおじさまたちと多分佳織もまったく同じ顔をしていただろう。
「明日も来てくださるっておっしゃるんでしたら、よろこんでご用意させていただきますけどね」
根岸くんが如才なく言い足すと、おじさまたちは、明日かぁ、といささか難しい顔になる。
「明日の現場はちと遠いんだよなぁ」
「でしたら都合のいいときにご連絡ください。無理に前日でなくても午前中にでも言っていただければご用意ができますから」
「おお、そうかい。そんじゃそうさせてもらうよ」
と、おじさまのひとりが電話番号の書き付けを受け取って、いそいそと内ポケットにしまいこんだ。
「あ、じゃあわたしもそろそろお勘定……」
「はい、ただいま」

