「はあ、でも僕猫舌なんですけど」
うおおい!
なにを無粋極まりないことを言ってくれてんだ兄ちゃん。湯気がご馳走って言葉を知らんのか!
黒目がうしろに行ってしまいそうな勢いで、横目に三人の席を凝視しながら憤慨する佳織に比べ、佐希子さんは表情ひとつ変えずに頭を下げ、その場を去った。
「でもまあ熱いうちがとにかく美味しいですから、まずは一口」
束の間表情の凍っていたおじさんたちは、我に返ると、抑えきれない苛立ちを口の端に漂わせながらもぎりぎり愛想よく言葉をつなげた。
若いやつはそれでも見え透いて仕方なしという体を崩さず、匙を差し入れ、念入りに冷まして一口。
次の瞬間、その瞳孔がかすかに見開かれたのを見て、佳織は己の手柄のように頷くと、特製のあんかけご飯をかきこんで、お代わりのお茶を所望した。
「なあゴンさん、あそこのさぁ、なんかやけにあっつそうなやつ、まだあるかい?」
反対側の、作業着姿の男が訊ねる。
佳織も気になった。もうお腹はいっぱいだけれど、見たところスープっぽい雰囲気だし、別腹には十分おさまる余地がある。

