濃いブルーの髪をゆるく編んで流し、目にはレクトと呼ばれる薄い色のついたガラスを入れて。かっちりしたブラウスと細身のパンツ、そしてロングのコートを羽織って、私はセレスト一の繁華街を徘徊していた。

髪は洗えば落ちる染料で染め、金色のレクトを入れて目の色を金色に変えた。服装もいつもと全然違うし完璧だ。誰がどう見ても、ミレイにも私にも見えないはずだ。

目指すは明日のサプライズ!

と、言うわけで私は孤児院に行くノリでカイと共にお城の外に出た。

若いカップルやお忍び貴族が蔓延る町。もし誰に見られて陛下に密告でもされたら…サプライズはおじゃんになる。

それどころか、浮気を疑われて、結婚早々王妃と国王の不仲説が広まってしまう。世のご令嬢はここぞとばかりに陛下に寄っていくだろう。そうなれば陛下の眉間のシワが深くなること必至。

そんな訳で私は変装をして街を徘徊している。…誰にもバレず、穏便にことを済ませる予定だった。

済ませる予定だったのだ。年齢も雰囲気もばらばらな女性たちの集団に遭遇するまでは。

女性が集まる、つまり何かの安売りがあるかオシャレな店があるのだろう。

普通にそう考えた私はその集団の最前列に躍り出た。

いたのは見覚えのある綺麗な男の人と、これまた見覚えのある男の人。

片方は言わずもがな、陛下だ。細身のパンツ、長めのブーツ、ワイシャツにロングコート。そんな簡素な格好をしていてもそのオーラは止まることを知らない。今日はメガネをかけているけど、それがまたとてつもなく似合う。

一方お隣の男。配色は私と同じ。金の髪に青い目。陛下とは違い、綺麗というよりはかっこいい男。線もしっかりしていて見るからに体育会系。けれど勘が鋭く頭も切れるイヤミな男だ。

私はこの男を知っている。うちの父の下で剣やら何やらを学びに来ている男。要するに顔見知り。よく剣を交えるし、軽口もたたき合う仲。まあ、お互いに名前は教えてないから向こうは私をフウと呼ぶし私も向こうをエルと呼んでいるんだけどね。

どういう訳で一緒にいるのかはわからないけど、ここに私がいるのは絶対にまずい。

多分バレない。髪の色も目の色も違うし。だから大丈夫。

自分にそう言い聞かせる。けれど長居はよくない。そう思った私は静かにその場を去ろうとした。けれどこの女性集団はこの異様に美形な2人に群がった集団なわけで…。
私は後ろから思いっきりタックルされた。

「きゃっ」

女の子らいし声が出た!とか思う間もなく私の体が傾く。咄嗟のことで手が出ず、顔がどんどん地面に近づいていく。


やがてドサッと音がした。
反射的に目を閉じてはいたけど不思議なことに少しも痛くない。

そして気づく。私は、エルの腕の中にすっぽり収まっていたのだ。