少しばかりの寝にくさを感じ、目を覚ました私はやはり陛下の腕の中だった。

時計を確認すれば8時を回っている。

おかしい。母国にいる間は、どんなことがあっても5時には目覚めていたのに。昨日は陛下が私の制服を直してくれるのを見届けた後、ちゃんと日付が変わる前に寝たというのに。

ちなみにどうでも良いけど陛下の仕事は完璧でした。制服のスカートは完璧に直りました。

「陛下、起きて、起きてー?」

昨日同様陛下の腕を揺する。昨日みたいに、人の寝顔をニヤニヤ見るのは趣味か的なことを言われるのは恥ずかし過ぎるので最小限で止めておいた。

少し見ちゃうのは許してほしい。だって本当に綺麗なんだもん。いや、美しいは罪って本当だね。人殺せるよ。鼻血による大量出血か何かで。

「今…何時だ…?」

寝起き陛下の掠れた声が耳元で囁かれる。この人は声まで綺麗だ。非の打ち所がない。そんなことを思いつつ、動揺を押し殺して時計を横目で確認すると、私は陛下に教えてあげる。

「8時28分」

私の声とほぼ同時に、陛下の目がぱちっと開いた気配がした。どうやらばっちり起きたらしい。

「寝坊ですか?」

「…お前が来るまでは、何時に寝ても4時に目が覚めるようになっていたのだがな」

おう。負けた。けど陛下もか。案外一緒の寝台を使ってくっついて寝ているのがいけないのかもしれない。

はっきり言えばあたたかくて寝心地は悪くないのだ。少し寝にくいと感じることもあるけど。

「8時間睡眠なんて健康的じゃない?私も普段なら5時には目が覚めるんだけどなぁ。あんまり深く眠るタイプじゃないし」

「自分が退化したようで複雑なんだが…」

陛下はそう言いながら不機嫌そうに前髪を掻き上げる。普段前髪で隠れている左目と泣きぼくろ、そして前髪を掻き上げるという仕草、その全てがセクシーすぎる。

(正確な年齢は知らないけど)結構若いはずだけど大人の色気というやつだろうか。

朝から目の保養通り越して毒だわ。

「陛下って、いくつ?」

「…変なこと考えてないか」

ビクッとしそうになるけど改めて考えると別にそんな風に言われるようなこと考えていた訳ではない。

私は一体この人に何だと思われてるのか。出会って二日なのに…。

「考えてないよ?純粋な疑問。大丈夫。陛下と出会っていろんなことに驚かされたから(主に陛下が手芸までこなせるオカンなスペックね!)今更驚かないって。私的には24、5かなーって思うんだけど…。ちなみに私は18ね」

私の年齢を聞いた陛下はわざとらしく怪訝そうな顔をして見せた。老けてると言いたいのだろうか。複雑である。

「18でその落ち着きのなさか…」

怪訝そうな顔に呆れた声。どうやら結構本心らしい。

「余計なお世話だっつーのっ!ふんっ」

わざとらしくそっぽを向き、着替えてくる旨を伝え、私は王妃の私室へと向かった。

そういえば結局陛下はいくつなんだろう。