(あーあ、行っちゃった)

満煌が閉めたドアを見つめながら星は思った。

(それにしてもそろそろ起きないかな)

もう美璃の顔には苦しんだ痕跡はなくなっている。そろそろ起きてもおかしくない頃だ。

(ま、無理に起こすこともないけど)

と、美璃のまぶたが動いた。

「美璃?」

どうやらようやく起きたようだ。

「ん、星ぃ…」

「どーした?水欲しい?」

「んー…大丈夫」

美璃ははにかむように星に微笑んで見せた。

「部活じゃないの?私は大丈夫だよ?」

「んー、そうだけど、美璃が起きた時誰かいた方がいいじゃん。先生もなぜかいないし。ま、大丈夫なら、もう行こっかな」

「うん!頑張ってきてね」

「おう!」

屈託のない明るい笑顔を美璃に見せる星。

そのまま星は保健室から出ていった。

…声にならない叫びとともに顔を真っ赤にした美璃が布団に潜り込んだことは、知る由もなかった。

(久しぶりに二人きりだったぁ…)