「…」
オロオロと出てきたホセを見て、ウィングが唇を噛んだのをキングは確かに見た。
「記憶失ってる。多分ショック過ぎたんだろ、だからあんまり刺激するなよ。」
なんでそいつばっかり。
「…」
ウィングの方を向くと、唇がそう動いた。
「だから優しくしてやってくれ、いいか?」
殺人鬼が。
「ホセ、出てきて大丈夫だよ、ほら、お前の仲間。」
仲間?
「みんな優しいからな。」
そいつにそんな顔をするな。
「…」
ウィングの瞳は血走り、唇と拳から血が流れていた。
「…」
針を刺しただけで大騒ぎするはずのウィングが、肉が抉れるまで拳を握っている。
「…」
異常だった。
なんだかんだ言って、ウィングはキースが一番で唯一で最高で最低で最後で最初だった親友なんだ。
その親友を殺した、理不尽に殺した奴が目の前で被害者ヅラしている。
記憶を失ったからなんだ。
そんなの言い訳にすらならない。
キングにはウィングの気持ちは分かった。
「普通の奴ならな…」
でも、相手が特殊過ぎる。
記憶を取り戻そうものなら全力で自分を罰しようとするであろうホセ。
こっちまで攻め手に回ったら防御がゼロになって一瞬で壊れる。
自分たちは二人も失う。
二人も失う。
二人も、仲間を。
「この時点ではフェニックスが正解かな。」
キングには、それでも分からなかった。


