「う…」
呻き声に、フェニックスは顔を上げた。
「おはよ、ホセ。」
思ったよりは冷静に、ホセは頷いた。
「大丈夫か?」
「…僕は、何故此処に…」
「記憶、ねーの?」
「…」
ホセは俯いて少し考えたようだった。
「分からない。」
「…そっか。」
綺麗な赤い髪に手を伸ばして、ふんわりと撫でる。
ホセは少し吃驚したようで、目をパチクリさせた。
「自分の名前は覚えてる?」
「…分かりません。」
「じゃあ、自分のことで知ってること、何でもいいから教えて。」
「…あの。」
「ん?」
「僕は、自分を憎んでいる。凄く、凄く憎い。憎くてたまらない、殺したいほど憎い。」
「…うん。」
ギュ、とフェニックスはホセを抱きしめた。
「アクアって覚えてないかな、水色の髪の子。」
ホセはしばらく考えて、問いかけた。
「…貴方は、アイス様ですか?」
「…ううん、違うよ。」
アイス、酷薄な瞳の嗤いが思い起こされた。
「…僕の中に、アイスと、アクアと…きぃす…うぃんぐ…きんぐ…くらうん…ぜろ…ゔぃ…?」
ギュ、とホセは頭を庇うように丸まった。
「大丈夫、大丈夫だよ、無理やりは止めろ、ホセ。」
何とかして思い出そうと苦悶するホセに、フェニックスはそう言った。
「ほ、せ…?」
「うん、お前の名前。」
優しく、フェニックスは言った。
「…」
しばらく考えて、ホセは首を振った。
「覚えが…ありません…」
そっか、微笑んでフェニックスはそっと泣いた。


