ぼんやり虚空を見つめるフェニックスは大きな毛糸玉にもたせかけられ、ヤーンはそれを見つめた。
「フェニックスくん。」
「…あー」
「記憶はある?」
「あー」
「ホセくんの記憶はある?」
「…うー。」
「…」
流れる血には逆らえなかったみたいだにゃ。
ショッキングな映像を記憶から隠したら簡単に首を振った。
でも、次の瞬間フェニックスの身体が跳ねた。
「…ああ。」
「えっ。」
ガクン、と身体が傾いだ。
「う、あ、ああああああ!!!!」
「!!!」
糸が刺さっているのに、その意思に反してフェニックスは叫ぶ。
ヤーンはギョッとして、そして喜んだ。
「クク…楽しみだろ…ホセくん?」
「…」
飢えた獣のようだ、キセノンは誇らしげにそう思った。
あとは、この狂犬を飼いならすだけ。
「早く喰いたい?」
「…」
意識が朦朧としているのだろう。
当然といえば当然だ、昼夜を問わず拷問の限りを尽くされたのだし、こんな状態になってしまえば。
尚更だ。
「ホセ、いいな。」
「…」
十字架に括られたホセは、虚ろにこちらを見た。
そんなホセに背を向け、キセノンは捕らえた五人の檻へ向かった。
船長、雪豹、死神。
この3人は、実験には使えない。
何故ならばホセに対し強すぎるからだ。
本能的に動くホセは、自分より圧倒的に強い強者には立ち向かわないし立ち向かえないだろう。
アイスはそこまで強いとは言えないが、骨の髄まで染み付けられた恐怖と服従心はそう簡単には克服できないだろう。
よって、選抜は3人。
アクア、ウィング、キース。
アクアが狙われる確率は低いだろう、彼女に対する想いは深く身体に染み付いている。
あとはウィングかキースか。
だが見た目ではアクアが最も弱い。
誰を狙うか、つまり誰が死ぬか。
吸血鬼の吸血には少なくとも数秒はかかるため、全員瞬殺は可能性が低い。
誰が始めに死ぬかな?
キセノンは、酷く猟奇的に笑った。


