去って行く全員の背中を、ホセはじっと見つめていた。
「…いい子だな、ホント。ありがとよ、礼言うぜ。」
キセノンはそう言って、ホセの頭にポンと手を置いた。
「全員帰ったら拷問の続きだ。見るだけ見て好きにしろよ。…スレプト、ついてこい。」
「…分かった。」
消えたキセノンと、心配そうにそれに続くスレプト。
振り向きもせず、ホセはフェニックスの方を見つめていた。
「…良かったにゃ?本当に。」
「…」
「あいつは忘れるにゃ。どう足掻いても、あいつの種族だからにゃ。」
「…分かってる。」
「…キミは…何を思ってるんだにゃ?」
「…ねえ、ヤーン様。」
「ヤーンでいいにゃ。」
「…ヤーン。」
「何にゃ?」
「もし、もしかしたらさ。覚えててくれないかな。俺のこと。俺と過ごした日のこと…忘れたりしないかも。」
「…ホセくん。」
「ホセでいい。」
「ううん、ホセくんにゃ。ねえホセくん、僕はどう言えばいいにゃか分からにゃいにゃ。」
「…」
「キセノンだったら、きっとキミに絶望を突きつけるために言うにゃ、それはあり得ないって。」
「…」
「スレプトだったら、あるかもしれないって言ってくれるにゃ。」
「…」
「でもにゃ、僕はわからにゃいにゃ。」
「…」
「100年生きた化けねこにゃからにゃ。人間はたくさん見たにゃ。」
「…」
「でも、どうすればいいかわからにゃいにゃ。ホセくん。」
僕がねこだったら、キミの膝の上で丸くなって、キミのその涙を受け止められるのに。
化け猫には、不器用に言葉をかけることしかできにゃいにゃ。
「ホセくん。今なら間に合うにゃよ。」
「…分かってる。」
「行くにゃ。僕はキミのことが好きにゃ。好きになったんだにゃ。」
「俺は動物に好かれるからな。」
「そうにゃ。人間より動物の方が、人を見る目があるからにゃ。…って人間だって動物のはずにゃんだけどにゃ。」
「…」
「人間には余計にゃものが多すぎて、キミの美しさが分からにゃいんだにゃ。」
「…ヤーン、褒めてるのか?」
「そうにゃ。美しいものを愛する。それは本能的なものにゃ。キミは美しいにゃ。写真に収めるように、キミを守りたいにゃ。」
「…キセノン様に怒られるぞ。」
「僕はキミを守りたいにゃ。僕は魅せられたんだにゃ。」
キミは魔性の子にゃね。
「…ヤーン。」
ついに見えなくなったフェニックスを追うように、ゆっくりとホセは立ち上がった。
「…俺は、好かれちゃ駄目なのに。」
「そんなことにゃいにゃ。」
大好きにゃ。
ヤーンはそう言って、ビックリするほど濡れたホセの頬をそっと舐めた。
「頑張るにゃ、ホセくん。きっとキミにも、幸せは来るにゃ。」


