9月初日の深夜3:00。
複数人の気配に、アイスは飛び起きた。
半ば仰け反るように跳ね起きた勢いで、眠っていたらしいホセは目を覚ます。
「アイスさん…」
周りを囲まれている。
アイスはそっとホセを抱き寄せた。
「お前は必ず守る、いいな。」
ホセは戸惑ったように頷く。
外の気配にはとうに気がついていたけれど。
微かに鼻腔をくすぐる火の薫りに、アイスは顔をしかめた。
面倒なことに、と。
信用されていないホセは担がれ、そのまま寝室を飛び出す。
素足に積もった雪が押し付けられ、アイスは顔を歪ませ痛みに耐えた。
「アイスさん…?」
「動くな…っ街まで行く、その後この星を出る。お前は黙って担がれていろ、427。」
「でも…」
氷点下を優に超えた気温が容赦なく、ただでさえ冷たいはずのアイスの体温すら奪った。
数十秒で歯が噛み合わなくなる。
痛い。
涙が凍り、瞳を刺す。
肺の中が凍る。
声帯が動かない。
限界を超えた極寒の中の逃走劇。
船橋に着いた頃には、移動魔法を使ったにもかかわらず身体が凍え切っていた。
寒いを越えてもう痛い。
激痛だった。
「アイスさん___」
ホセの囁きも、途中までしか聞こえなかった。
熱い。
熱い。
あつい…
耳鳴りがする。
突然熱い液体に晒され気絶しそうになった頃、持ち直した意識の中僅かに香る血の匂い。
まさかホセがやられたのかとアイスは一瞬思ったが、結論は直ぐに出た。
___ああ、俺が死ぬのか。
ドサ、と倒れ伏して大量に広がる血の中、何処か夢を見ているような気分でアイスは目を閉じた。


