カードを出してくると、427が跪いていた。
震えている体とは裏腹に、427は美しく笑った。
「アイスさん、お願いがあるんです。」
「…なんだ?」
椅子に腰かけてやれば、靴に軽く口付ける。
瞳を細くし、楽しげに笑った427を見た。
「俺を、壊して下さい。」
響いたその声すらもう芸術。
なんて幸せそうに笑うんだろうと。
俺は思った。
「…壊す。」
「はい、いつかしてくださったように…俺の精神を完全にアイスさんに依存させてください。」
「…」
「俺を壊して…解放して」
その姿をご主人様に見てほしい。
皆の幻想を完全に取り払いたい。
他とは違うなんて馬鹿なこと、きっともう考えないように。
「精神を壊していただければ、俺は本能を押さえきることができませんから。」
自我は消え、ただの化け物になる。
「本能は体の記憶に従い、脊髄の命令でで動きます。」
俺の体に刻まれたアイスさんの恐怖は消えません。
深く、深く。
俺は貴方に屈服する。
「貴方は、俺を押さえる…操るたった一人の調教師になれる…」
ニコリと笑って、ホセは顔をあげた。
「悪い話じゃ…ないと思います。」
自分で言うのもどうかと思いますが、赤ん坊でも一国の兵士一人は倒せる。
物心ついたときにはもう、能力だけなら素手でも成人の攻撃特化悪魔にも劣らない最強種族。
汚れて野蛮なヴァンパイア。
「俺は徹底的に自分を追い詰めて来たからはじめの方には使い物にならないかもしれませんが、それでも足手まといにはなりません。」
アイスさん。
「俺を、貴方の道具にしてください。」
貴方だけを仰ぎ、貴方だけに従属する生きた兵器。
生まれながらの最強戦闘民族、吸血鬼の戦闘力にずば抜けた頭脳を合わせ持つ貴重種15歳。
「アイスさん、俺から自由を奪って下さい。」
どこまでも透き通った幸せな笑顔は、こちらを嫌でも悲しくさせた。
「幸せそうだな。」
「はい。」
アイスさんのお役にたつことができますから、と。
「それにもう俺は、何も感じたくない。」
「…」
また笑う。
幸せそうに。
お前は充分壊れているだろう、427。
自分を傷つける相手に本気で感謝を感じるお前は、気がつかないのか、427。
とっくにお前は壊れている。
「良いのか。やっとできた仲間を失うだろう。…同じことだと思うが。」
「それが目的です。」
ニコ、と。
「アイスさんがこんなに良い方で俺は幸せです。」
子猫のように擦り寄ってきた427を優しく撫で上げる。
ホセは美しく、笑った。


