ピクリともしないホセに、ウィングは憎々しげに唾を吐いた。
「ありがと、船長。」
「なんで?」
「俺止めてくれて。多分あのままだったら俺殺されてた。」
淡々とウィングはそう言った。
「それはねーだろ。」
と、そう言ったのはキングだ。
キースを背負っている。
「万が一にもあいつは俺らを傷つけねーよ。そんなメンタルねーし。」
「そうだな。」
ウィングは聞いた事のあるような声にグッと振り向いた。
フェニックスが転ぶのがそれとほぼ同時で、ホセを取り落としそれを男が取り上げた。
「427は貰っていく。」
「っ!」
白銀の髪に、酷薄なグレーの瞳。
男のくせにやたら長いまつ毛で、憂げな表情はホセと似ているようでまるで違う。
青白い肌は死者と交わる地獄の看守独特の冷気を纏っている。
長身の青年、アイスは酷く楽しそうに嗤った。
「…?」
「セレン…いや、ホセの看守だよ、アクア。残虐非道なクズ。」
「そこまで言われる覚えはない。」
アイスは少しムッとしたようだった。
「じゃあな、…ご主人様?」
フッと振り返るようにして、アイスは消えてしまった。


