階段を下る度、階下から大きな音が聞こえ出す。
サトリのブーツが鳴る音が、掻き消されていく。
「時計台の内部。歯車だらけだけど私は好きなの。…大きな規則的な音が、すごく落ち着いて。」
唐突に呟いたクラウンにサトリは頷いて相手が後ろを向いていることを思い出し、声に出して相槌を打つ。
「サトリは、嫌い?」
「そんなことはない。好きでもないが。」
「…うん。」
言いながら、クラウンは立ち止まる。
扉はなくポッカリと空いた長方形の穴に、サトリを誘った。
「この中に、入ってくれる?」
「ああ。」
サトリは辺りを見回しながらその部屋に入った。
3メートルはあろうかという歯車が噛み合い、回り、回り、回る回る。
油で輝く、歯車、パイプ、ベルト…
機械的に機械的な機械化された機械。
「圧巻、でしょ?」
音もなくクラウンはサトリの隣に立った。
「…そうだな。」
その時突然。
ガシャンと背後の歯車が鳴った。
「決まりはなかったから。」
クラウンは、にっこりした。
手に持ったたった一つの、数センチにも満たない歯車を嵌め込んだ。
「廃墟に改造を施したって、ルール通りでしょ?」
その歯車はまるで、二人を外界から引き離すように。
たった一つの入り口を閉じて、部屋を歪ませた。
歪み、歪み、歪む歪む。
あまりの早さに、二人の髪が踊る。
それは、凶器になる。
「っ…!」
「話そ、サトリ。」
掌に隠し持っていた七つの歯車を指の間に挟み込み、クラウンはにっこり笑う。
「閻魔を、殺すんでしょ?」
サトリは今更ながらに、クラウンの牙城へ誘い込まれたことを後悔した。


