それから三週間ほど経った日。
ホセとゼロが軽く実践練習をしていた時だった。
「ああゼロさん超天才。もうやだ惚れた。」
「心にもないことを言わない!!」
相変わらず無表情のラブコールを叱られながら、ホセはゼロに抱きつこうとして離される。
「…もう一戦だけ構いませんか。お願いします。」
「勿論です。ねえねえゼロさん俺が勝ったらキスし」
「ません。」
「じゃあ」
「絶対に、しません。」
「ねえゼロさん俺の心を読まないで。」
「口に出したら色々崩れ落ちるでしょう。」
「えー。」
「えーじゃありません。お願いしますね。」
「はーい。」
どちらが教えている側か分からない。
微笑んだ後ゼロは表情を引き締めて、あの金属製の平たい棒を握る。
両サイドにはノコギリのような鋭い刃と鈍い刃とが付けられ、柄のところは丸く加工されて手に馴染むように包帯が巻きつけてあった。
「じゃあ、いきまーす。」
ホセは無表情に無邪気に無感動に無抑揚に言って、突然ゼロに襲いかかった。
「くっ…うっ…」
それを受け止めゼロは呻く。
ギシギシと激しく関節が軋む、身体が悲鳴を上げる…
「…ねえゼロさん。」
ホセは無感動に、無表情のまま呟いた。
「身体壊れるよ。引いて。」
「…っ!」
その瞬間、ゼロの身体に異常な負荷がかかる。
ゼロは顔を歪めて攻撃を受け流した。
間髪入れず襲いかかってきたホセの拳をなんとか受け止め、急所を避けつつ後退はしない。
隙を狙い、その瞬間にテコの原理で自分の腕を支点に脇腹に…
「…ゼロさんは、何でもかんでも押し切ろうとするのが悪い癖です。」
「あっ…ぁ…」
防御が薄くなった所を突かれて、ゼロはガクと膝を折った。
「ゼロさん、自分のこと強いと思ってますか。」
「…思いませんが…」
「でもゼロさんって、力に任せて押し切ろうとしたり後先考えずに特攻かけたりします。そこ直さないと絶対すぐに」
「放っておいてください、私の攻撃力だけ上げてくれればいいんです。防御も体力も要らない、どうせ敵わないのなら一瞬で馬力を上げて一撃を入れた方がいいでしょう。」
「…ゼロさん。」
ホセは、倒れたゼロをそっと抱き起こしながら呟いた。
「…死なないで…ね…?」
「…」
ゼロは顔を背けた、ホセの手を振り払って起き上がると、よろめきながらいなくなった。


