「なーにしてるの?」
「…クラウン。」
「妬いちゃうなぁ、私のことはどうでもいいの?」
腰まで流れる綺麗な髪を持て余しながら、クラウンはクスクス笑った。
「…そういう、訳じゃない。」
「うーん、あのね?私ずっと聞きたかったんだけど。ゼロの何処がかっこいいの?」
俯いていたホセはその問いに顔を跳ね上げた。
「ゼロさんは優しいし頭いいし努力家だしお金持ちだしめっちゃ紳士でモテモテだしものすごく優しいし遊園地連れてってくれそうだし勉強教えてくれるし眼鏡似合うし執事服似合うしある程度悪ノリしてくれるし嫌がるけどメイド服着てくれるし抱っこしてくれるしおんぶもしてくれるし高い高いも前は…」
「分かった分かった分かったって!」
悲鳴のような声を上げて、クラウンは耳を塞いだ。
「分かったよ、ホセのゼロさん愛は分かったから!!!」
「…」
「ゼロ、大丈夫なの?」
「…全然。」
「…そっか。」
苦しそうに呻くゼロの顔を無表情に見つめるホセの頭を、クラウンはそっと撫でた。
「ホセは、幸せ?」
「…」
「私は、それを望んでるだけなんだよ。」
「…ありがとう。」
ホセは呟いた、折れてしまいそうなほど儚い声だった。
「ホセ。」
「…」
「ホセが笑ってくれるなら、私はなんでもする。」
「…」
「お願いだから一人で悩まないで、ホセ。」
「…」
或る国の美しいお姫様は、その美しさ故万人に求められ。
姫を我が物にしようと、何人もの男が死んでいったのだという。
姫はそれを憂い、とある泉に身を投げた。
もう、誰も傷つかないように。
「…」
「ねえ、ホセ。」
「…」
ホセとそのお姫様と、どっちが美しいのだろうか?
その男と私たちと、どちらが愚かなのだろうか?
「…クラウン。」
でも、私なら。
「…俺は…生きるべきなの…?」
私なら。
「当たり前だよ。」
絶対に死なせたりしない。
独りにさせるくらいなら、私は一番じゃなくていい。
「…」
お伽話のようなバッドエンドは、絶対に許さない。
クラウンはそう誓って、天井を仰いだ。


