「魂霊の契りを交わす、これでどうだ?」
不敵に微笑むNは、ゆっくりと呟いた。
喧嘩を続ける閻魔とサトリがなんとか魔界に戻ってきた時のこと。
ゼロはスヤスヤ眠っていたが、ウィングとアクアとクラウンもサトリにあやかり全員でテーブルを囲んでホセについて物凄く議論を交わして1時間。
だんだんアクアが舟を漕ぎ始めたところだった。
「婚礼…?」
ウィングが怪訝そうに言った。
「いいや、魂霊だ。タマシイが2つ並ぶ。別名不可破の誓約と言って、元々は人間と悪魔の魂の取引を指していたが…」
「今はほとんど使われていない上に悪魔同士の契約が多い、だろう?」
サトリに、閻魔が続ける。
Nは薄く微笑み、頷いた。
「悪魔同士の約束など、鬼も笑うような馬鹿馬鹿しさだ。私が保証人となって魂霊の誓いを交わせ。そしてジュエル君を決闘によって奪い合えばいい。」
Nの言葉に、挑発的にアイスが続けた。
「降りる奴は?」
自分は既に手首を軽く切って指先にまで血を滴らせている。
「止めて下さい、俺が全員に従えばいいだけでしょ…?何で、何で傷つく必要があるんですか?嫌だ、嫌だ止めて…!」
ホセは少し身動ぎして、全員を悲しげに見て叫んだ。
「大丈夫。ホセを幸せに出来るのは私だけだから。私の船がホセにとって最高の場所だから…」
クラウンが優しく微笑む。
「綺麗ごとを言うな、ジュエルは使われることを幸せとして生きてきた、利用してやるのが筋だろう?」
閻魔が指を噛み切ってニィと笑んだ。
「427は俺の物だ。427は俺に依存してる。俺だけに依存する…」
アイスは夢を見ているように囁く。
「彼は元々貴族の出だ!私なら彼を相応しい位置に置ける!」
サトリはムッとして親指の付け根を深く切った。
「じゃあ…結ぼうか。」
Nが言ったが、そこでウィングがパッと顔を上げた。
「おい待て、お前はいいのかよ?」
「…全員が負けたら、私が貰う。」
Nはそう言って微笑んだ。
「私の代理でゼロを出す。ゼロが勝ったら…彼はゼロの好きにさせてやってくれ。」
「あいつも結べばいいだろ?」
「…いや、ゼロの血液は心臓部周辺にしかないから…この契約には不向きだ。」
Nが言って、全員がもう一度ゆっくりとその眼差しに殺気を込める。
静かなにらみ合いに、ホセは涙を浮かべて俯いた。
「…何で…俺は、傷ついてほしくないのに何で…」
「ジュエル君。君にもやることがある…その能力の貸し出しだ」
「貸出し…?」
「決闘となればブライドは圧倒的に不利だからな。君が彼に魔力と夢術を分け与えなさい。君が嫌と言うなら話は別だが。」
Nはホセの頭を撫でながら語りかけた。
「まあブライドに、ジュエル君の核を一時的に、かつ一部だけ渡すだけだ。それはあいつの体に馴染むだろう、だが忘れるな」
「…」
「膨大な魔力はジュエル君の物だ、それは一部分たりともブライドには渡らない。与えるのは誰でも持っているような中の内側だから。」
「分かっています…」
「夢術も同様だ、炎ではない可能性が高い。」
「はい、分かりました…」
「伝えろよ、分かったね?」
ホセは頷いた。
綺麗な涙が、頰を伝って溢れた。


