「クラウンさんを救い出すのは、そんなに難しくありませんでした…通気口を通って、侵入したんです。」
「それで腕が外れていたんですね。」
「彼女を連れ出し君達を追いかけ、あと1日で追いつくと思った日の朝でした…彼女が忽然と姿を消したんです。」
「お前が食ったんだろ?」
「…私をなんだと思ってるんですか、私はヒトは食べません。」
「普通は生肉食べませんだろ。」
「…とにかく、私は船中を探し回りました。しかし彼女はどこにもいませんでした…元々そう広くありませんから探し残しはありません。」
「じゃあクラウンが甲板に出ている間に攫われたんじゃ…」
「それなんですが、アクアさん。それは絶対にあり得ません。」
「?」
「何故ならですね。私の乗っていた船はそんなに高性能ではないからです。」
あなた方の船のように“酸素ドームを張ることができません”から。
「…」
「?!」
「…???」
「生物なら…私を含め!生物ならあの真空状態でこの船に近づきそして侵入することは不可能です。百歩譲って生きていてもあの気圧差で船内に侵入して来たら流石に気がつきます!」
「ゼロさん泣かないで。」
「あの船についていたのは最低限の安全装置だけでした、船全体は一本の木で作られていますから密閉空間です。雑魚寝ではありませんでした。私はクラウンさんの部屋の前で起きていましたから侵入の方も問題ありません!」
「ゼロさんまた徹夜…」
「仕方ないでしょう!」
ゼロはムッとして言った。
「ですからすぐに追いかけ」
「大丈夫、ゼロさん。」
ホセは立ち上がった、既に解決策はあった。
「…まあ、とりあえずは。」
誘拐されたクラウンの行方は大方予想がついてる。
だから。
「一ヶ月後には解決させる。心配するな。」
ホセは立ち上がって、クシャっとアクアの頭を撫でた。
「するべきはお前の誕生日パーティーの準備…」
欲しいものを言ってみろ、歩き出したホセは背中越しに振り返ってそう呟いた。