「お調子はいかがですか、クラウンさん。」
至極丁寧に話しかけてくるゼロに、クラウンは曖昧に会釈した。
元からゼロは慇懃な所があっただけに、丁寧な口調に違和感はない。
「明日明後日くらいには追いつきます。落ち着いたらL君が連絡をくれる筈なのですが…」
ゼロは言いながら疲れたように微笑む。
「…ねえ、ずっと思ってたんだけどゼロはどうして此処と魔界を自由に行き来できるの?」
魔界も此処も物理的に結構距離がある。
気軽にホイホイ行ったり来たりできないのだ。
「…召喚、に近いですかね。召喚と召還の繰り返しといいますか…はは。」
ゼロの目が遠くなった。
「まあ私はL君の傀儡ですから…召喚くらいいくらでもされますが、ちょっと魔界側に呼ばれると…失礼、喚ばれると腹が立ちますがまあ仕方ないというかなんというか…」
ゼロは疲れ切ったようにそう言った。
「喚ばれてから24時間、私には猶予が与えられます。その間に帰る準備をするというわけです…悲しいですね、ロボットって。」
「あ、うん…」
生きるゴミ屑みたいに扱ってきたけど、もうちょっと優しくしてあげようかな。
クラウンはそっと誓ったのだった。
「あいたっ!」
「どしたのゼロ!!?」
「ああ…酷い…この船あっちこっちに吹き矢が仕込まれてるんです…ピアスが空きましたよ…瞼に…痛い…ああっ!えげつない所狙って来ますね、耳が吹っ飛ぶ所です!」
吹き矢からのバズーカのコンボで、ゼロはムッとした。
「…あ、うん。」
どうやらゼロのことを虐げている人はたくさんいるようだった。
「ダイジョウブ?」
「心配していないなら言わなくて良いんですよクラウンさん。」
棒読みがバレてしまったクラウンは、笑って誤魔化す。
だって見た目クズすぎるんだもん。
ゼロはもともと結構整った顔をしていたのだが(ホセ曰く天界から舞い降りてきた小悪魔)、連日のストレスと自分への無関心が災いし酷いことになってしまったのだ。
褐色の肌(ホセ曰く抱きしめられると死ねる、マジで昇天する)は見るも無残に傷だらけ。
灰色掛かった黒髪(堕天使にしては綺麗すぎるよなfromホセ)は縮れて滅多切り。
色素の薄い目(酷いわ…私を掴んで離さないの…fromロメ)はメイクさながらの濃い隈のせいで酷く落ちくぼんで見える。
「…ゼロって、女の子と付き合ってたことあるの?」
「女の子と?あるわけないでしょう、ロメさんしか避けて通らない方すらいませんからね。」
「そうじゃなくて…こうなる前は、結構かっこよかったんでしょ?」
そう言うと、ゼロは合点したように
「ありえませんね。」
心の底から憎悪に歪んだ顔をした。
「顔は良くても、馬鹿で身の程知らずの井の中の蛙で高慢でしたから。」
ゼロは吐き捨てる。
「私は今でも、あいつが許せない。」
地の底から響くような憎悪の感情を乗せられたその声は。
まるで血溜まりの戦場のようにドス黒く、そして闇のように紅く歪んだ。


