果たして、ヴィセーブは路地裏に縮こまっていた。
「ヴィス。」
「せんぱい…」
「ヴィス、帰るぞ。」
元気なくヘタリと垂れた両耳の裏をポリポリかきながら、セレンはそう言った。
「せんぱいには分かんないよ。俺の気持ちなんか。」
「ヴィス。」
セレンとは違い少し我儘を言うヴィセーブの髪をクルクル指に巻きつけては解く。
「ヴィス、泣いて良い。そんな顔をするな、せっかくの綺麗な顔が台無しだ。」
「せんぱい…」
ヴィセーブはキュッとセレンの胸元に顔を寄せ、わんわん泣き出してしまった。
「ヴィス、俺はお前が羨ましい。」
「…?」
「ヴィス。俺はな」
あやすような声で囁いてやれば、ヴィセーブはハッとしてセレンの顔を見た。
「駄目だよ先輩、絶対駄目!!だって俺知ってるよ…俺」
「ヴィス。」
黙ってられるな?
綺麗すぎる声に、ヴィセーブはくらりと目の前が霞んだ。


