「こんなか。」
アクアの自室の前で、ウィングが言った。
コンコン、軽くノックして返事が返ってくる。
「ほら。」
ホセを促し、ウィングは退いた。
ホセはスッと息を吸うと、その扉を開く…
「…アクア。」
この部屋にはいないのだろうか、ホセはスルスルと部屋に入って辺りを見回す。
「ちょっと待ってくださいウィング、今行きますから!」
先の声は聞こえなかったのだろうか、アクアが奥の方でバタバタしている音が聞こえる。
アクアの部屋は3LDKで、まず始めの部屋がLDK、奥にバスルーム。
右手奥には書斎がある辺りアクアらしい。
LDKはかなり広く、楕円形の部屋に合わせ家具もホセが加工した。
中央に巨大な水槽、向かって左側にベッド、右側にリビングダイニングとキッチン。
女の子らしく可愛らしいアクセサリーのショーケースや天蓋付きのベッド、全体にシーテイストでまとめられているのはアクアの趣味だ。
貝殻のオルゴールや魚の枕、三段の大きな水槽の中には一番上にベタやネオンテトラ、グッピー、イエローピック、金魚など小型の熱帯から亜熱帯の淡水魚が泳いで、二段目にはファミリアンフィッシュ、チョウチョウウオ、クマノミなど海水のサンゴ礁に住む生き物が泳いでいる。
三段目はミニチュアジンベイ、ライトニングシャーク、カイテイガメなど深海の生き物。
淡水と海水の間にはフィルターがあり、それを通すことで淡水を海水に、また海水を淡水にすることが可能なのだ。
さらに最上段には背景の黒い円形の水槽があり、その中にはクラゲが泳いでいる。
BGMはその水槽の頂点で吹き上がる噴水の水音で、それ以外にはウォータークロックの、ぽちゃんぽちゃんと時を刻む音。
ベッド脇に置かれたシェルフには、栞の挟まった読みかけの本と、ガラスのコップに入った栞が置いてあった。
「お待たせしました、ウィング…あれ?お兄ちゃん?」
アクアは嬉しそうに目を細める。
細い左手首には包帯があった、自分が掴んでしまった所だろうか、ホセは罪悪感に俯いた。
「どうしたんですか?」
「…話、あって。」
「そうなんですか?」
ニコ、アクアは屈託無く笑って、ホセをソファに誘った。
「どうぞ、拙宅ですが。…なんて。」
ふふ、笑ってアクアは嬉しそうにホセの前に腰かけた。
内股気味の両足がぷらぷら揺れている。
茶色いブーツの白いふわふわさくらんぼが、ポフポフ揺れる。
深い水色のような透明な髪は天の川のようにうねる髪は一つにまとめられまるで滝のようだと、ホセは思った。
「…俺を、どう思ってる…?」
ホセは、揺れる足を見つめながら言った。
ポフポフ、ポフポフ揺れるさくらんぼ。
「どう、ですか?」
アクアはにっこりしながら微笑んだ。
「大好き、です。」
ニコ、端的な答え。
嗚呼まるで、ホセは思った。
快刀乱麻ってのはこのことか。
「ずっと、お兄ちゃんで、大切な人で…だから私は、お兄ちゃんが大好きです!」
ニコ、微笑んだアクアにホセは立ち上がった。
「…側に、いてくれ…るか。」
アクアは、さらに笑みを深くして笑う。
「もちろんですよっ!!」
ピョン、弾みをつけてアクアはホセの腕の中に飛び込んだ。


