「ホセ、寝てろっつったろ馬鹿。3時間前まで昏睡だったクセに。」
「…もう、平気だ。」
「黙ってろバーカ。寝ろ寝ろ、アホセって呼ぶぞ。」
ホセは聞いていないようで、スタスタ歩いて寄って来た。
カウンターでウォッカを煽っていたウィングは溜息をついて、背後の棚からワインを引っ張り出した。
意外にもスマートにグラスに注ぐと、目の前の席に置いてコントローラで椅子を操作する。
ホセは俯き加減に会釈して軽く腰掛けると、ワインは飲まずに手の中で揺らす。
「…ウィング、それ大丈夫なのか。お前まだ15じゃないよな…」
「いーんだよ、今日くらい固いこと言うな。…つか今日だけじゃないけど。」
ホセは頷いて、独り言のように呟いた。
「アクア、は。」
「会いたい?」
「…」
答えずに、ホセは俯く。
「言わなきゃわかんねーぞ。俺はあの魔界の甘やかし勢とは違うからな。」
「…別に、甘やかされてなんか」
「甘やかされてるよ、俺に言わせりゃどろっどろにメープルシロップ漬けにされてるよ。」
「別にメープルシロップに限ることないんじゃないか…っていうかそんなこと」
「誠実なツッコミご苦労様だな。あいつらみんなお前に甘すぎ。お前もあいつらに甘えすぎ。自己責任ってもんを負えよ馬鹿。」
「責任なら負って」
「ねーよ。自分の事傷つけてそれはまあいいよ、だけどお前周りの迷惑考えろ。」
俺は利害損得で動くけど、俺から見てもお前は不利益だ。
「生産性があるのにそれを自覚してねーから利用するにも面倒。挙げ句の果てに勝手に悲観して勝手に消えるんだから迷惑。」
自覚しろよホセ。
「愛されてるかどうかは置いといて、とりあえず必要とされてる。あいつらはまず甘えさせてから教えようとしてるみたいだけど。」
「…迷惑。」
「そういう考えがな。」
しゅん、落ち込んだホセにウィングが辛辣にそう言った。
「飲まねーの?せっかくボトル開けたんだから二人で空けようぜ。」
「…控えろよ、体に悪い。」
「黙ってろ薬中。安定剤ごっそり使いやがって。」
「…」
目をそらして、ホセはワインをあおった。
それを見てウィングも手元のウォッカを一気に飲み干すと、ワイングラスを取ってホセの隣に移動した。
「忘れるには酒が一番だよ、そう思わねーか?」
「トんだことないんだよ。」
「ひゅーっ、カッケーなぁ。」
ウィングはケラケラ笑ってそう言って、僅かに頰を紅潮させながら呟いた。
「今日だけは、正気じゃなかったってことにしてやるけど?」
ホセは顔を上げて、トロンと蕩けたような瞳のまま顔を歪めた。
「ウィ、ング…っ…むきゅわぁっ!」
意味不明の音を発しながら襲いかかったホセは、そのままウィングの胸元にダイブした。
「ぎゃあーーーーっ!!!?」
「ウィングーー!!」
「うぉい止めろアホセ!!何をお前は躊躇なく同性に抱きついてんだよ馬鹿!綺麗なお姉さんにしろそういうことは!!」
「ウィングー!」
ホセと違ってしっかり筋肉質なウィングは今にもボキッといきそうな細い体に片手で掴める小顔が乗っかっても全くダメージはないが、残念ながら同じくクッションもない。
適度に柔らかくないのだ。
体脂肪率一桁なのだ。
「やーめーろー!!」
要するに攻撃と体力と防御力が全くもってアンバランスなホセがそんな机みたいなところに顔をグリグリしたら。
「うわぁぁぁぁ!!!」
案の定、思いっきり鼻血が出てしまった。


