「いや、いや離して!!」
「思い出せよアクア…お前は俺のせいでどんな目にあってきた。」
暴れるアクアをいとも簡単に押さえ込み、ホセは囁いた。
「辛かったろ、ずっと…」
生まれた時からずっと独り。
誰も味方はなく、我慢だらけの毎日。
挙げ句の果てに売られて地獄を味わされて、また買い取られて。
理不尽な扱いに何度泣いてきた?
ようやく慣れたと思ったら見たこともない天界に放り込まれて。
俺が流刑になったと知ったから、追いかけてきたんだろ?
復讐を果たすために。
「違う、やだ、お兄ちゃん!!」
私は幸せだった。
お兄ちゃんに出会えて、愛されて、私は不自由なく育った…
でももう嫌なの、もう私のためにお兄ちゃんに傷ついて欲しくもないし、その上に成り立つ幸せなんか幸せじゃない。
もうこれ以上、私は後悔したくない…!
「離して、離してっ!!」
「暴れるな、おいアクア、危ない…」
のたうちまわるアクアに、まるで治療を嫌がる小動物でも宥めるようにホセは微笑んだ。
「大丈夫、大丈夫…」
貴方は知らない。
貴方が地獄にいた間、私がずっと天界にいたことをどれだけ後悔したか。
貴方が囚われたと知った時、すぐに助けに行かなかったことをとどれだけ後悔したか。
貴方が私を守るために払った犠牲を止められなかったことをどれだけ後悔したか。
貴方と始めに別れた時、感謝と謝罪を伝えられなかったことをどれだけ後悔したか。
何も知らなかった私を、どれだけ後悔したか。
そして私が生まれてきたことすら、
こんなにも悔やんでいることを。
未だ、貴方は知らない。
「やめてっ!!」
「…ふふ。」
ホセは優しく微笑んだ。
添えられた両手は、動かせない。
「さよなら、アクア。」
綺麗な瞳が細められて、信じられないほど綺麗にホセの表情(カオ)が“完成”した。


