彼は美少年である。
彼は彼である。
よって彼は美少年である。
いつかあいつに教えて貰った三段論法だが、さてこれで合っていたのかと聞かれるとそこも微妙なところだ。
もちろんあいつは気が狂ってもこんな例文は使わないだろう。(実際あいつが使ったのは人間の話だった)
そんなことは分かってる。
もちろん先述の三段論法においてあいつと彼とは同一人物だ…
つまりあいつの美しさを表現するにあたってわざわざこんな難しいことを言ったのは気分だ。
美少年であるだけならいくらでもいるだろう。
彼を美少年としない場合もあるだろう。
こういった先ほどの論法の反論に、俺はあえてこういう。
彼が美少年であることは彼が生きているのと同じくらい確実だと…
確かにひいき目も認めなくはない、しかしあいつが才色兼備の秀才であり天才であり美少年であり美男子であり好青年ですらあることを認めない人間、いや動物はこの世界に存在しない。
彼の美しさを認めることができないのならばすなわちそれは動物ではない…いや、生き物ですらないのだろう。
それはもう、生物たることの一つの証明ですらある。
美しく、それはもう美しく。
暗い紅い髪、優雅な仕草。
紅い眼、対称に白い肌。
スラリと背は高い。
このルスタミアス・コールに対し対極に位置する人間界では決して見ることができない絶対的な美…
いや、人非ざる者が住む(差別的な意味はない、ただそうとしか表現できないだけだ…)この宇宙にすら。
絶対的な才色兼備を兼ねそろえる悪魔科の人間(人間ではないが、そういうのが便利だ)ですら劣る。
絶対的な美。
あいつは魔界出身なのだが、その魔界の内部抗争が殆どあいつの争奪戦だ。
魔界派つまり身分差別派と研究所派、あと魔界派に入ってる地獄派。
地獄は普通に監獄代わりだ。
あいつは何故かその監獄に入っていたらしい。
よく利用される奴なのだ。
時折こちらを振り向く、その仕草が美しい。
俺の容貌も大概美しいが(自惚れではない、決して)あいつには敵うまい。
時折零す、嘲笑すらも。