さて、時は少々巻き戻り。
ウィングが空を見上げている頃の船内。
「あれ?お兄ちゃん!」
「…」
夜中に起き出して来たアクアは、水でも飲もうとキッチンに向かう途中で亡霊のように徘徊するホセを見つけた。
「どうしたんですか?お兄ちゃん。」
「ああアクア、よかった。ここに居たのか。探していた。」
「お風邪はいいんですか?」
「ああ。それでアクア、少し付き合って欲しいんだが。」
「もちろんですよ、何処にですか?」
ニコ、自然にアクアは言った。
ホセはアクアの細い手首を掴むと、地下室へと降りていく。
地下牢に入り込むと、いくつも角を曲がりその度に印をつけていった。
「何してるんですか?」
「ここは入り組んでいるからな、迷子になったら困るだろ。」
「?そうですか。」
スタスタ歩いていくホセに腕を掴まれて、アクアは早足で歩く。
そしてホセは急に足を止め、その空いた牢にアクアを誘い自分も入って鍵を閉めた。
「お兄ちゃん…?」
「鍵はここに置いとくからな。」
入口に束を置いて、ホセは優しく言った。
檻は広く静かで、周りからは死角になって中は見えない。
「何を…するんですか…?」
「なあアクア。」
いっそ清々しい程の笑顔で、ホセが笑った。
「お父さんとお母さんに会いたくはないか?」


