その日の夜、ウィングは珍しく寝られずに甲板に立っていた。
よくホセがここに立って空を見上げていたのを思い出す。
___空を見てると、夢を見てる気分になるんだ。
___この世界には俺しかいないんじゃないかって…そんな夢をみるんだ。
___寂しくは…ないな。俺にとって孤独は安心材料だったから。…だって、誰も傷つけなくて済むだろう。
無表情に無感動に無邪気にずっと生きてきたホセ。
「…ただの、光じゃねーのかな。」
無感動に無慈悲に、ウィングも生きてきたけれど、自分の行動には、言葉には全て悪意と敵意と邪気に満ちてたんだななんて今更思った。
空を見上げても、そこにあるのはただの光で。
海を見てもそこにあるのはただの水で。
本を読んでもそれはただの文字の羅列。
絵を見てもそれはただの混在した色。
「いつ…間違えたんだろ。」
雲も星も草も木も花も鳥も犬も猫も兎も馬も魚も虫も水も土も。
ウィングにとっては等しく“物体”。
熱も炎も風も光も影も虹ですら。
ウィングにとっては等しく“現象”。
初めて、見たいと渇望した。
アクアが、ホセが見ている世界を見たい。
星を見て泣きたい。
虹を見て笑いたい。
物語を読んで泣きたい。
絵を見て笑いたい。
心から。
「…」
人の死を悼みたい。
人の生を喜びたい。
「…」
でもきっとこれが自分に与えられた罰なんだと。
裏切りを重ねてきた自分への罰なんだと。
ウィングはそう思って夜空を見上げて笑ってみせた。
___ほら、君は空っぽだからっちゃ。
___その心に好きな感情を流し込めるんだっちゃ。
___それは特技ぎゅ、あの茶髪君と組めば最強のコンビになれるぎゅー。
「…ホント、嫌になる。」
脳裏に浮かんだにたぁ、と笑った妖精…悪魔の心を持つ子供に唾を吐いてウィングは甲板を後にした。


