「ホセ。」
ホセを部屋に閉じ込めて数時間後、トレイの上に載せた食事を持ってウィングはノックと共に現れた。
「…」
内側から扉が開く。
ウィングを認めてホセは食事を受け取ろうとした。
「ありがとう…ウィング。…様。」
戸惑いがちに呟いたホセを押しのけて、ウィングは部屋に入った。
「目の前で食べろ。食ったらすぐ持っていく。」
「…分かった…よ。」
生活感のない部屋のベッドに座って、ホセは頷く。
「いただき…ます…」
ホセは随分憔悴して、スープを飲む手も半分震えている。
二口も食べないうちに、力尽きたように手が止まった。
「美味くなかった?」
「…ちが…食欲…無くて…」
「じゃあスープだけでいいよ。」
「…残すのは…駄目…」
「倒れられたら困る。キースはお前が殺しただろ。」
冷淡に告げると、ホセは疲れ切ったような手つきでスープを飲みだした。
「…」
ようやく飲みきった時には、もう既に数時間が経過していた。
「疲れてんの?風邪?」
「…別に…特には。」
「…」
ホセの額に手を当てて、ウィングは目を覗き込んだ。
「潤んでるな、しかも熱いんだけど。」
「…」
「寝てろ。」
「…」
「いいな、寝てろ。」
「…はい。」
従順にホセはベッドに沈み込むように横になったが、目は開いたままだ。
「…お前さ、黒髪の方に戻れよ。そっちの方が扱いやすい。」
「俺よりあいつの方が優れてるって言うのか。」
ぐ、と頭を上げてホセは睨むようにそう言った。
「お前のが優れてるよ。優秀だし。だけどお前は完璧なだけなんだよ。まるで人形。」
「別に、いいだろ俺は」
「あいつは人間らしい。お前よりよっぽど綺麗だ。」
ウィングは淡々と言った。
「例えばアクアはお前よりあの黒髪の方が好きだと思うぜ。」
「…」
「アクアは自己犠牲的な英雄より側にいてくれる兄弟が欲しいんだよ。」
お前なら、誰よりその気持ち分かると思うけどな。
ずっと孤独に生きてきたお前には、誰よりアクアを理解できると思うけど。
誰にも愛されない苦しみを知ってるお前には、難しい?
「どんな奴でも良いからお前と居たいって気持ち、分かんないかな。」
理想主義のお前には分からないかな。
理想なんかより、幸せなものがあるってこと。
「ま、良いよ。」
部外者の俺は何も言わない。
「おやすみ。」
そんな風に苦しげな啜り泣きが。
哀しく響くような心が欲しいのに。
乾ききって冷めたウィングは、ただそれを音として聞くことしかできない。
それを憂いても、償うことなんかできやしないのに。


