「お前らに捕まったからには覚悟はできてる…いるんだろ、ウィング。」
ウトウトしていたウィングは、その声で目を覚ました。
目隠しにヘッドホンで大音量のミュージックを聞かされながら、十字架に囚われたホセは、どうやら船の地下牢らしい、そう頭の中で呟く。
「いるよ。」
ウィングは答えて立ち上がる。
「…マイク越しの会話か…いい手だな、音の反響が分からない…骨伝導も阻止したのか?」
「…お前は、俺に聞かれたことだけ答えろ。」
まともに顔は見えないが、ホセは笑っているように見えた。
穏やかに、施されるであろう拷問を甘んじて受け入れようとする。
「一つ目、お前は誰の味方だ。」
「主人の味方だ。」
「具体的に。」
「クラウン、アクア、お前。…助けを求められたら誰にでもつく。」
淡々とホセは言った。
「解放されたら。」
「考えてない。必要がないから…」
ホセは僅かに身動ぎした。
重い鎖が震えて鳴った。
「三つ、アクアとの関係は。」
「…どういう意味だ。」
ホセは掠れた声で問うた。
苦しそうにまた身体を捩って、鎖がまた鳴る。
「お前はアクアの家族か。」
「…いいや、叔父にあたる。俺の年の離れた兄と姉の子がアクアだ。悪魔が家族間で結婚するのはよくあることだろ。」
「そいつらは?」
「姉は出産のショックで死んだ。兄は俺が殺した。」
淡々とホセは言った。
「アクアの祖母と祖父は同じ日に事故で死んだ。親戚は俺だけだ。」
「家は?」
「ジュエル。魔界でも有名な鬼族の家系だった。」
「アクアを三年引き取ったっていうのは。」
「本当だ。」
「そのあと捨てたってのは。」
「本当だ。」
「詳しく話せ。」
「…」
ホセは自重で締め付けてくる拘束を和らげようと身体を揺するが、かえって絞められ荒い息をしながら言った。
「謝礼金は…はぁ…10億だった…やってた仕事も全部辞めた、住む場所も保障された…」
「お前じゃねーよ。アクアの話。」
「囚われて…一週間に一度羽を切り取られた…らしい…地獄の苦しみ…だと聞いた…」
ホセは四肢を震わせて苦しげに言った。
時間が経つほど苦しい尋問。
ホセは耐えながら涙すら流す。
「その後お前は?」
「貰った10億は一週間で使い切った。何にもやる気が出なくてただその辺を彷徨ってた。」
「使い道は。」
「覚えてない…」
諦めたのかピクリともせずホセはそう言った。
「んなわけねーだろ。」
「そう…大したことじゃ…ない…」
「アクアと引き換えの金が?」
「特に…印象…に残ってない…」
「そ。」
ウィングは立ち上がった、そしてホセの足を掴むといきなり引っ張った。
「っあ、あっ、止め、苦し、痛い、もげるもげる取れるってウィングほんと辛い…」
「お前はもっと賢いと思ってたけど。」
「う、ウィン、グ、苦し…」
痙攣し始めたところに、一旦手を離し首を掴んで持ち上げた。
鎖が音を立てて緩み、全身が脱力してホセはガクンと首を垂れる。
「余計な事までなんでもかんでも“忘れられない”お前がアクアに関係する何かを忘れる訳がない。」
「…忘れた。」
「ああそう。」
涙で濡れた目隠しを不意に剥ぎ取られ、ホセは目を瞬かせる。
「プリーズルックアットディス。」
下手な人間語で言われ、霞む目を瞬きホセは前方を見た。
「!?」
「思い出した?」
気を失ったアクアが、そこに鎖で繋がれていた。


