「アーアビックリシタヨ、ナニスルノ?」
「…効かないか。」
辺りは一瞬で荒野と化した、全てが焼き尽くされた世界。
口から血を吐き、それでも立ち上がった相手に、ホセはさして驚いた様子もなくそう言った。
「…腹、立つけど…仕方ない…か。」
眠るアクアとウィングの周りに、分厚く氷の壁を張る。
その外側から更に幾重ものバリアを築き上げ、それからホセは胸元に輝く十字架を握りしめた。
「時限…アンロック。精々暴れろ…化け物。」
その黄金の輝きは大きく奪われて曇り、黄昏時に霧が出たようなそんな空の色になる。
同時に暗い赤髪は色濃く闇を写し、瞳は反対に黄金に輝く。
「…うっ…」
僅かに息苦しそうに、ソレは…吸血鬼は。
荒野を見渡して瞳孔を細めた。
「彼奴…め…」
頭に響く奴の声。
___殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
___敵を、目の前の敵のみを。
___余計な事もするな。
___いい子にしてれば褒美をやるよ。
充満する死の冷気。
ホセは呻いて飛び上がる。
伸びる死の気配を躱し、時限式の舞を躍る。
与えられない自由にただ焦がれる。
苦しすぎる毎日。
僅かに与えられた自由すら。
彼奴の指先で描かれるフィールドの中の。
彼奴の定めた時計の針がグルリと一周回るまで。
狂ったような高笑いをしながら、彼奴の望む化け物のフリをしながら。
ホセは苦しげに泣いた。
「…誰か…助けて…」
圧倒的なスペックの差は埋められるはずもなく、相手は倒れた。
「ハナセ、オレは、オレはァァッ!」
「…」
ごめん、ごめんな。
何故殺すのか、ホセには分からないから。
ごめん、ごめん。
やっぱり、獲物を狩るのと仲間を守るのと目的のない殺人は全て全く違う意味を持つ。
ごめん、君をもっと生かしてあげたかった。
でも俺は、君を殺す事でしか生きられないんだ…
「死ね。」
奴の望むダンスを踊らなければ。
また地獄を味わされる。
とんだ道化だ、ホセは嗤った。
俺を憎んでるあいつを、俺はずっと信じてるのに。
あいつはいつも俺を裏切り、苦しめ、痛めつける。
悪魔のようなあいつに、それでも俺は救いを求める。
いつか、どうか。
ほんの少しでいいから俺を愛して下さい。
せめて、憎まないで下さい。
せめて、俺にだって心くらいある事を思い出して下さい。
「…」
空は高いのに。
きっと、どこまでも続く宇宙。
なのに俺は自由になれない。
誰かの望む自分を、永遠に演じ続ける事でしか生きられない。
苦しい、苦しいんだ。
もう自由にしてほしい。
一度でいいから愛されたいと思うことすら、彼奴は罪だと糾弾するけど…


