「わりぃな、ヴィスはたまにこうなるんだ。」
なかなか先輩愛が強すぎる、と言ってミューズはヴィセーブをヒョイと担いだ。
「ロス、怪我は?」
「…大丈夫だ。」
良かった良かったとミューズが笑う。
「ん〜ここの森くるんじゃねーかと思ってさ、仕事適当にやってきた。」
「お前、いいのかそれで…」
「いーのいーの。ちょっと猟奇殺人犯出しちゃったけど俺の時代は人間70億以上いるし!」
「ちょっと待て。」
「死んでても100単位。へーきだよ。」
いやだめだろ。
キングは真剣にそう思ったが、ミューズはニコニコしていた。
「んー、ウィグ君ヴィス頼むね。急ぎ家つれて帰って服着せて欲しいかな。キー君はロスと戻ってて。フェスはキングとここで待機。」
ミューズはニコニコしながら言った。
「急いで。警察来るからその前に。フェスたちは俺に話合わせて、分かんないことは嘘ついてオッケー。」
ミューズは、はいはーいとウィング以下4名を物陰に押し込む。
「フェスとキングはそこで腰抜かして座りこめー!」
ほとんど間を置かず警官が現れた。
「あ、こんにちは、さっきの声ならこれですよ〜。」
ミューズはいつの間にか手に持っていたレコーダーをひらひらさせた。
「思ったよりおっきい音でたんでびっくりしました。」
警官は不審そうに座り込んでいる二人を見た。
「腰抜かしたんですよ、ったく本当弱虫つーかww」
「うっせびっくりしたんだよ!!」
負けじとフェニックスが吠える。
「ドッキリとかいうレベルじゃねー」
「君らは何者だ。」
「そいつの友達。悪魔じゃねーけど旅しててさ。丁度用事あったし近く通ったから寄ったんだよ。昨日合流した。」
「仲間はお前らだけか。」
「いや?1人悪魔科の女の子がいんの。その子が懐郷病でさ、鬱になりかけ。魔界にちょっと里帰りだよ。」
「その子に身分は。」
「さぁ、どうだろ。聞いてない。種族は鬼みたいだぜ。家出してたらしいから深くは聞いてないけど。」
「鬼?」
「ああ。」
女の子というのは当然アクアだが、アクアの種族は鬼ではなく妖精だ。
しかし、悪魔科妖精は奇跡の妖精と呼ばれて、その羽はすざましい癒しの力を持っている。
だから即捕獲及び強制連行だ。
ミューズ達はそれを知らないが、今はかえって都合がいい。
「そっちの金髪は?」
「こっちの金髪の兄貴。」
端的に、無愛想に答える。
「イケメンの遺伝子は俺から受け継いでるって訳だよ。いい?」
キングはすくっと立ち上がり、溜息をついた。
「ったく、てっめドッキリ如きで警察沙汰かよ。めんどくせー。」
柄の悪さはお墨付きだ。
どんな時でも手放さない白衣がかえって不良っぽい。
「いっつも泣かせられるからって仕返しで警察沙汰はねーだろばーか。」
半分本気だ。


