あの日から二ヶ月あまり、アクアとウィングはある星にいた。
「ウィング、おはようございます。」
「…ん…」
「ウィング。」
「…?」
「星が、綺麗ですよ。」
「…」
体を起こして、ウィングは頷いた。
恒星から遠く離れ、氷に閉ざされた惑星。
氷の山に穴を掘って、二人は生活していた。
寒いだけに空気も澄んで、オーロラや流れ星がよく見える。
吐き出される白い息で曇る視界すら綺麗で。
極寒の中の生活も、二ヶ月もしていてはもう慣れる。
「星?」
「流星群が、綺麗です。一緒に見ませんか?」
「うん、ちょっと待って。」
草も木もないこの星で、ランプにするのは動物の油と皮。
氷で作った暖炉の中に少しだけ灯っている。
氷が厚くて、明かりが入ってこないのだ。
「行くか。」
おかげで穴の中は暖かいのでコートは必要ないにしろ、外は0度を大いに下回る。
アクアは厚手のコートに手袋マフラー、スノーブーツに厚手の靴下という出で立ちだ。
ウィングも防寒具を手早く身につけ、アクアに続いて部屋を出る。
吐く息は白く美しく、空へ上がって消えていく。
重なって大きくなってそれも一瞬で。
背中合わせに夜空を見上げると、大小様々な星が輝いていた。
「あれがスカイブルー星群。その星がライクベガ。やっぱ全然景色が違うな。」
「私には、同じに見えますけど。どこから見ても宇宙は綺麗です。」
「綺麗、か。」
根っからの理系のウィングにとっては星空は観察対象であって座標に記録するための言ってしまえば点だ。
だがそんなことは何の興味もない文系のアクアからしてみれば、星はただ光る集合体のようだった。
数時間もそうしていただろうか、ランプの日が消えそうになったのを見てとって、ウィングが言った 。
「…冷えるぜ、もう帰るか。」
「はい。」
アクアは素直に応じて立ち上がった。
「…ねえ、ウィング。」
「ん?」
「この星のどこかの惑星の中の一つに、お兄ちゃんがいるかもしれないんですね。」
「…そうかもな。」
最後に見上げた満天の星をもう一度見上げて、ウィングは呟いた。
「…」
微笑んで、後は無言のまま、歩いた。


