「…」
床で丸まったホセは、すでに眠りについたようだった。
くーと平和な寝息が聞こえる。
クラウンもすっぽりと布団を被って眠っている。
平和な、これ以上ないほど平和な光景。
後も先もない今。
だからこそ束の間でもあるのだが、平和に眠る二人はそれを知る余地もなく。
日が高く昇るまで、二人の二度寝は続いた。
「…ホセ。」
「…」
「ホセ、起きてる?」
「ああ。」
土の床に丸くなったホセは、くるりと寝返りを打ってクラウンを見上げた。
「おはよう。」
寝起きのボーッとした顔。
ぼんやり霞む視界。
すごく平和で愛おしい。
「おはよ。」
滑るようにベッドを降りてホセの隣に寝そべる。
髪に絡む土の感触を感じたけど、後で落とせばいいからと。
クラウンは仰向けになった。
「ホセ…」
「何。」
「幸せだよ、私。」
「…そう。」
心臓の上で、白い骨がトクトク跳ねる。
瞳の奥で、涙がトクトク溢れる。
「クラウン。」
ホセは、ジッとクラウンを見やった。
こめかみを流れていく透明な涙を見つめた。
「綺麗だ。」
酷く響いた声に、クラウンは笑った。
「ありがと、ホセも綺麗。」
「…」
クラウンもホセと向き合った。
「慰め合いって、嫌い?」
「構うか、傷の舐め合いだっていい。」
硬い土はまるで彼らを包む世界のようだった。
そこにいるだけで、身体中が痛い。
楽になったと思ったら、すぐにその体勢を崩さないといけなくなる。
立っても座っても寝ても起きても。
決して楽になれない。
「正反対だな。」
ホセは言った。
「なのにどこか似てる。」
「似てるんだよ、私達。」
「…」
鼓動が重なり。
トクトク、トクトク。
呼吸が重なる。
スゥ、はぁ。
時間が重なり、命が重なる。
世界が重なり、心が重なり。
「…ホセ。」
「…」
「このままで、もう少し。」
「このままで、もう少し。」
言葉が重なる。
ずっとこの時間が続いて欲しい。
二人は心からそう願った。
仰向けになって内側の手をどちらともなく繋ぎあわせる。
時が止まったような洞窟、深層に響く水の音。
永遠にこの時が止まればいいのに。
二人は心からそう思った。


