『主様…!』
ウィングとアクアはスヤスヤと眠っていて、側にいた吸血鬼が一人ホセを認めて跪く。
『どうした?』
『主様にお会いしたかったのです。』
『俺に?』
『はい、どうしても御礼が申し上げたくて。』
『礼はいい。隷属を誓ってくれればそれで。』
『もちろんです。えと…我が唯一の主様。』
慣れていないのだろう、おぼつかない。
『ブーツにキスしろ。そして隷属を誓え。誓ったからには俺の命は絶対だし逆らったら容赦はしない。裏切ったら制裁を下す。内容についてはそこらにいる奴に聞けばいい。』
『ブーツ…?』
『そうだ。メリットとしては、お前の訴えを聞き入れよう。ま、駄目だったら諦めればいい。鬼族の輩に捕まったら助けてやるし代償を払えばお前の願いをなんでも叶える。』
『…っ…』
『ほら…じきに楽になる。数回やれば慣れる。どころか幸せらしいぞ?ククク…命令じゃなくてもしたくなるらしいが?』
吸血鬼は、意を決して足元に跪く。
ふわりと腰掛けたホセのブーツを手に取り、思いっきり見下してくる視線を感じながら一瞬だけ口付けた。
『クククク…あはははははっ!堕ちたな、同族の奴隷に!!くくく…ああ一興だ。そうだろう?』
屈辱に涙すら流しているその吸血鬼を立ち上がらせて、ホセは悪魔の笑みを浮かべた。
『レド。』
自分の名がその口から紡がれた瞬間、レドはどうしようもないほどの幸せを覚えた。
この方は天の上の存在なのだ。
この方の命に従うことが僕の幸せなのだ。
生きている限り、尽くそう。
死ぬときは、この方の盾になって死にたい。
僕は、主様の武器となり盾となるため生まれてきたのだ…
『主様…』
『クク…いい子だ、俺に名を呼んで欲しいなら』
従い続けろよ?
魔性、の笑み。
老若男女種族を問わず魅了する、笑み。
赤髪の方と違って、それを自覚し利用するホセに逆らえるモノなどいないしない。
絶対的な支配力、戦闘能力、統率力。
生まれ持ったその性は、まさに一国の主に相応しい。
『明日から訓練に入る。覚悟しろ。』
『はっ!』
レドの去り際に、ホセはまたあの微笑を浮かべた。
『期待しているぞ?』
『!』
ふふと笑って、ホセは霧に手を振った。


