「ヴィセーブ。」
膝枕されてうっとりしているヴィセーブに、さりげなく強烈な蹴りを入れつつフェニックスが言った。
「く…じゃねーやヴィセーブ、お前セレンに寄るな。」
「あ?」
狼がキレた。
「こらこらヴィス、そんな怖い顔をするな。」
せっかくのふわふわ尻尾が台無しだ。
「あほそれも違うわ。」
殴られた。
「先輩をいじめるな!!」
「よしよし仲良くしろヴィス。」
半泣きのヴィスはここぞとばかりにセレンにしがみついた。
「ふぇぇぇん!」
「ぶっ殺す。」
「賑やかだなあ…」
「ミューズさん今日までよく生きてこれたね。」
「2月14日に食料の寄付を受け付けるんだ。」
「集まりそうだな。」
無駄にイケメンなシェアハウス3人組のバレンタインは想像するに余りある。
想像して、それが恐らく想像の限界というやつにぶち当たるだろう。
1年分の食料を1日で集めるのだから。
「金はその辺で詐欺してりゃいいし。」
「犯罪だぞ。おい自首してこい。」
「結婚詐欺だぞ?」
「だぞじゃねーよ。犯罪には変わりねーよ。」
「給料みたいなもんだろ?」
「…」
この家をでたらすぐにこいつ警察に突き出そう。
そう心に決めたウィングだった。
まあこの星を出る頃には、一人の結婚詐欺師を見逃さざるを得ない。
そんな余裕はなかったのだから。


