塔の階段を上りながら、アクアはミューズの隣に立った。
「ミューズさん、先程の方は…?」
「ゲルマゾック=ケイ。奴隷だけど特別に地位が与えられてる。ここの警備やってる奴だよ。」
「そうなんですか。」
どうりで、言いかけてアクアは黙った。
「ビスさんというのは。」
「女の子なんだけどね。彼処に立ってた子。その子も奴隷だった。」
「…」
「…ビスは、ケイが好きだったんだけど。ケイは知ってたのか、知らないのか。ビスはただの奴隷だったから真っ先に連れて行かれたんだろうね。」
ミューズは悲しそうに言った。
「女の子…なのに。」
恋もできずに殺されたんだね。
「ごめん、暗くなっちゃった。もう直ぐだ、ここ開けたところ。」
厳重に閉められた扉の前に立って、ミューズが言った。
___何名だ?
「二人。男と女だよ、料金は後で払う。一人5000ドルでどうだ?」
___50000ドルだ。
「何言ってんだよったく。オーケー、分かった10000で手ェ打つよ。」
___計20000ドル。五割増して30000ドルだ。
「了解。開けろ。」
鎖が外れ扉が開いた。
「じゃ、頑張れよ。二人とも。案内人に言ったら行きたいところに連れて行ってくれるから。」
「何て言えばいいんですか?」
「吸血鬼のドンに会いたいと言えばいいよ。」
「連れて行ってくれるのかよ?」
「ああ、じゃ。俺はここまで。」
ミューズは手を振って、クルリと踵を返す。
「頑張れよ。」
にっこりして、ミューズはいなくなった。


